はじめに
健康診断で「血糖値が高い」と指摘されると、不安になる方も多いでしょう。高血糖は糖尿病の前兆であり、放置するとさまざまな健康問題を引き起こしますが、実は「歯医者」の受診も非常に重要です。血糖値と歯周病には深い関係があり、口腔内の健康が全身の健康に影響を与えることが分かっています。本記事では、血糖値の上昇が糖尿病と歯周病に与える影響、そして定期的な歯科検診の重要性について解説します。
血糖値と糖尿病の基礎知識
1. 血糖値とは?
血糖値は、血液中に含まれるブドウ糖の濃度を示します。正常な血糖値は、食事の影響を受けることもありますが、通常は70~100 mg/dLとされています。これが高くなると、糖尿病のリスクが高まります。
2. 糖尿病のリスク
高血糖状態が続くと、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」が生じ、これが糖尿病へと進行します。糖尿病は、慢性的な高血糖が続くことで、合併症を引き起こす病気です。合併症で特に注意が必要なのは、心血管疾患、腎疾患、神経障害、そして歯周病です。
参考文献
- American Diabetes Association. (2020). Standards of Medical Care in Diabetes—2020. Diabetes Care, 43(Supplement 1), S1-S232.
歯周病とは?
1. 歯周病の概要
歯周病は、歯を支える組織に炎症が起こる病気です。初期段階は「歯肉炎」と呼ばれ、適切なケアによって改善可能ですが、進行すると「歯周炎」に発展し、最終的には歯を失う原因となることもあります。
2. 歯周病の症状
歯周病の主な症状には、歯茎の腫れ、出血、口臭、歯のグラつきなどがあります。これらの症状は、初期段階ではあまり目立たないため、気づかないうちに進行してしまうことが多いです。
血糖値と歯周病の関係
1. 糖尿病が歯周病を引き起こすメカニズム
糖尿病患者は、非糖尿病患者に比べて歯周病のリスクが2~3倍高いとされています。高血糖状態では、体内の免疫機能が低下し、歯周病を引き起こす細菌に対して抵抗力が弱くなります。このため、歯周病が進行しやすくなります。
糖尿病の中でも2型糖尿病(耐糖能異常)は、「生活習慣」が起因する病気となります。歯周病と合わせて虫歯にも罹っていることもあります。歯磨きなどの口腔内のメンテナンスが行き届いていないと、虫歯や歯周病になりやすいです。痛みがあるため、食生活も自ずと柔らかい食べ物になってしまい、早食いや食べ過ぎの原因となります。そういった食生活が続くと血糖値を上げやすくなってしまいます。
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2. 歯周病が血糖コントロールに与える影響
逆に、歯周病があると、炎症反応が体内で引き起こされ、インスリン抵抗性が増加します。これにより、血糖値がさらに上昇する悪循環が生まれます。この相互作用は、糖尿病の管理を難しくし、合併症のリスクを高める要因となります。
参考文献
- Mealey, B. L., & Oates, T. W. (2006). Diabetes Mellitus and Periodontal Diseases. Journal of Periodontology, 77(8), 1289-1303.
定期的な歯科検診の重要性
1. 早期発見と予防
血糖値が高いと診断された場合、定期的な歯科検診を受けることが重要です。歯科医によるチェックアップは、歯周病の早期発見や予防に役立ちます。特に、以下の点に注意が必要です。
- プラークの除去: 定期的な歯のクリーニングにより、プラークを効果的に除去し、歯周病のリスクを減少させることができます。
- 口腔ケアの指導: 正しいブラッシング方法やフロスの使い方を学ぶことで、日常の口腔ケアの質を向上させることができます。
「歯周病検診」が市町村で実施されています。20歳、30歳、40歳、50歳、60歳、70歳の節目年齢であれば血糖値の高低に関わらず無料で調べてくれる場合もあります。
2. 全身の健康管理
歯科医は、口腔内の健康だけでなく、全身の健康についてもアドバイスを行います。食生活の改善や運動習慣の見直しを通じて、血糖値の管理をサポートしてくれるでしょう。
3.オーラルフレイルの予防
高齢者が歯を失う原因のほとんどは歯周病です。そうならないようにコントロールできれば、オーラルフレイルからフレイルへと進んで健康寿命を減らしてしまうのを防ぐことができます。
それだけでも費用対効果は高い上に、もし加えて血糖値までコントロールできたら丸儲け。国全体の医療需要を減らすことにも繋がります。
まとめ
血糖値が高いと診断された場合、生活習慣の見直しが重要ですが、同時に歯科医の受診も忘れてはいけません。血糖値と歯周病の関係を理解することで、健康維持に向けたより良い選択ができるようになります。定期的な歯科検診を受けることで、口腔内の健康を守り、糖尿病のリスクを低減させることが可能です。
参考文献
- American Diabetes Association. (2020). Standards of Medical Care in Diabetes—2020. Diabetes Care, 43(Supplement 1), S1-S232.
- Mealey, B. L., & Oates, T. W. (2006). Diabetes Mellitus and Periodontal Diseases. Journal of Periodontology, 77(8), 1289-1303.
血糖値を管理し、口腔内の健康を保つことで、より良いライフスタイルを実現しましょう。定期的に歯科医を訪れることは、あなたの健康維持にとって非常に重要なステップです。
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