はじめに
前回の記事で、便秘のタイプと改善方法(下剤の選び方)について説明をしました。今回は、下剤(便秘薬)種類についてより詳しく知りたい方向けへ紹介していきたいと思います。
正しい薬の知識を身につけて便秘と付き合っていきましょう。
1. 便秘の3つの種類
前回の記事で便秘は一般的に以下の3種類に分類されます。
もう一つ器質性便秘という便秘がありますが、大腸がんやポリープなどの病気が原因となるため、今回は割愛します。
1.1 直腸性便秘
特徴: 直腸や肛門の筋肉が正常に機能しない状態。排便時に直腸の筋肉が収縮する代わりに、異常に緊張することがあります。
症状: 排便が困難で、長時間かけても完全に排便できない、または排便後に完全に空になった感じがしません。
原因: 神経系の問題、筋肉の調整異常などが原因となることが多い。
1.2 弛緩性便秘
特徴: 大腸の蠕動が遅く、糞便が大腸内で長時間滞留する状態。
症状: 排便の頻度が少なく、1週間に3回以下の場合が多い。糞便が硬く、排便が困難。
原因: 大腸の蠕動機能が低下していることが原因。ホルモン異常、神経系の問題、生活習慣などが要因となる。
1.3 痙攣性便秘
特徴: 肛門周囲の筋肉(骨盤底筋)が正常に機能しない状態。排便時に肛門周囲の筋肉が収縮する代わりに、異常に緊張することがある。
症状: 排便が困難で、痛みを伴う場合もある。排便後に完全に空になった感じがしない。
原因: 神経系の問題、筋肉の調整異常、慢性的なストレスなどが原因となることが多い。
2. 便秘薬の3つの種類を紹介
便秘薬は大きく分けて以下の3つのカテゴリーに分類されます。
1: 機械的下剤
2: 刺激性下剤
3:浣腸・座薬 です
これらを使い分けて使用することで、便意を解消します。
2. 1 機械的下剤(刺激が少なく、クセになりにくい第一選択として使用)
塩類下剤(酸化マグネシウムや硫酸マグネシウム等)
・体内に吸収されにくく、大腸まで届く。
・便に水分がとどまり、便が柔らかくなる。(腸内の浸透圧が上昇するため)
・水分を多く摂ると良い。
※注意※
酸化マグネシウムや硫酸マグネシウムは体内にほとんど吸収されませんが、一部吸収された分は腎臓により排泄されます。腎臓が悪い方は服用に注意が必要なため主治医へ相談しましょう。
膨張性下剤(カルメロースやプランタゴ・オバタ、寒天等)
・体内に吸収されにくく、薬が水分を吸収し便が膨らむ。
・大きくなった便は腸に物理的刺激を与えて、排便を促す。
・排便となって体外へ出るのは少し遅い。
・水分を多く摂ると良い。
※注意※
水分を吸収し膨張する為、胃もたれや腹部膨満感が出る場合があります。また、便の量を増やしますので腸がポリープやガン等で狭くなっている場合、腸閉塞を引き起こす可能性があるため、指摘を受けている方や異変を感じたら中止しましょう。
浸潤性下剤(ジオクチルソジウムスルホサクシネート:DSS)
・便に水分を含ませ、便を柔らかくすることで排便しやすくする。
(界面活性作用によって便の表面張力を低下させ流ため)
・作用効果が弱い為、他の薬と併用される場合が多い。
2.2 刺激性下剤(腸を刺激して蠕動運動を促す。下痢や腹痛を伴うことも。短期間の使用が推奨)
小腸刺激性下剤(ヒマシ油)
・リシノール酸が小腸を刺激することで排便を促します。
※小腸の中でリパーゼ(小腸分解酵素)の作用を受け、グリセリンとリシノール酸に分解される。
大腸刺激性下剤
大腸刺激性はフェノールフタレイン系・ジフェニルメタン系・アントラキノン系の3つに分けられます。
フェノールフタレイン系(フェノバリン・ラキソナリン等)・・・小腸の胆汁に分解されたあと、大腸粘膜を刺激し蠕動運動を亢進させることで排便を促します。
フェニルメタン系(ビサコジル・ピコスルファートナトリウム等)・・・大腸の細菌がもつ酵素によって分解された物質が大腸の蠕動運動を亢進させて排便を促すとともに、大腸での水分吸収を抑制することで便を柔らかくして排便を促進します。
アントラキノン系(ダイオウ・センナ・アロエ等)・・・この薬はそのままの形では効果を発揮しないため、胃や小腸では作用せず、大腸の腸内細菌によって分解されて作られたアントラキノンが大腸の粘膜を直接刺激もしくは腸管壁の神経を刺激することによって蠕動運動を亢進し、排便を促します。
2.3 浣腸・座薬
浣腸(グリセリンなど)
・浣腸は肛門から直接薬剤を注入。
・便を柔らかくしたり潤滑剤として使用。
・直接直腸を刺激する事により排便刺激を得る。
・頻繁に使用していると直腸が麻痺して効き目が薄れてしまう。
座薬(炭酸水素ナトリウムなど)
・肛門内に挿入。
・溶けて二酸化炭素を発生させ直腸を刺激し蠕動運動を亢進させる。
※食事からも!腸内環境を整えるプロバイオティクス
プロバイオティクスは腸内の善玉菌を増やし、腸の機能を改善します。ヨーグルトやサプリメントで摂取できます。腸内環境を整えることで、便秘の予防や改善に役立ちます。
▼こちらの記事も参照ください▼
3. 注意点と副作用
便秘薬の使用には注意が必要です。市販薬は一時的な使用の際に検討しましょう。
・刺激性の長期間の使用が腸の機能を低下させる可能性があります。
・過剰な使用や長期間内服をしていると電解質異常を引き起こすことがあります。
長期的な内服を希望される場合は、医療機関へ受診し指示された用量を守ることが重要です。
4. 生活習慣の改善
便秘を予防・改善するためには、薬物療法だけでなく、生活習慣の見直しも重要です。以下のポイントを意識してみましょう。
食物繊維の摂取: 積極的に野菜や果物、全粒穀物を摂取しましょう。
水分補給: 十分な水分を摂ることで、便を柔らかく保つことができます。
運動: 定期的な運動は腸の動きを促進します。
ストレス管理: リラクゼーションや趣味の時間を持つことでストレスを軽減しましょう。
5. まとめ
便秘は多くの人が抱える悩みですが、正しい知識を持って対処することで改善が可能です。便秘薬の種類や使い分けについて理解し、自分に合った方法で便秘を解消しましょう。症状が改善しない場合や、重度の便秘が続く場合は、必ず専門医に相談しましょう。
参考文献
日本消化器病学会. (2020). 便秘診療ガイドライン.日本内科学会. (2018). 内科学.McRorie, J. W., & Fahey, J. W. (2015). Fiber and prebiotics: mechanisms and health benefits. Nutrients
自分の健康は自分で守る!!!
あたなが1日でも長く健康な日々を過ごせますように…❤️
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