はじめに
「フレイル」という言葉をご存知でしょうか?
2020年4月から後期高齢者健診で「フレイル」に着目した健診がスタートしました。
フレイルとは「健常な状態から要介護状態へ移行する中間の状態」
年をとれば
・体力の低下
・筋力の衰え
・外出が億劫になる
・人付き合いが減る
など加齢や筋力や認知機能が衰え、心身の活力が低下した状態を
英語で「虚弱」を意味する「フレイル」と呼びます。
フレイルは健常な状態から要介護状態へ移行する中間の状態と位置付けられています。
フレイルになると寝たきりや死亡のリスクに…
要支援・要介護の前段階の状態であるフレイルは、単なる身体的機能の衰えだけではなく、精神的脆弱や社会性低下なども生じることが特徴です。
改善をせずにそのまま放置すると介護が必要な状態になる可能性が高く、早期発見と適切な予防・改善をしていくことが大切になります。
フレイルは予防が可能
フレイルであっても、適切な心掛けで自立した生活を維持することができます。予防や回復が可能な状態だからこそフレイルの予兆にいち早く気づくことが大切です。
75歳以上の人であれば、「後期高齢者健診」で発見することが可能です。
この健康診断では、以下の問診項目があり、健康状態を把握します。
①健康状態
②心の健康状態
③食習慣
④口腔機能
⑤体重変化
⑥運動・転倒
⑦認知機能
⑧喫煙
⑨社会参加
➓ソーシャルサポート
では、具体的にはどんな状態をフレイルと呼ぶのでしょうか?
フレイルのチェック項目
フレイルの指定の評価基準はありませんが、次の日本版CHS基準という評価方法がよく用いられます。
日本版 CHS 基準
体重減少(6カ月で、2~3kg以上の体重減少)
筋力低下(握力:男性26kg以下、女性18kg以下)
疲労感(ここ2週間、わけもなく疲れたような感じがする)
歩行速度(通常歩行速度が1.0 m/秒以下)
身体活動(①軽い運動・体操をしていますか?②定期的な運動・スポーツをしていますか?この2つのいずれにも「1週間に1度もしていない」と回答)
評価(0項目:健常、1~2項目:プレフレイル、3項目以上:フレイル)
フレイルを構成する「3つの要素」
フレイルはどのような状態をあらわすのでしょうか?
「3つの衰え」について紹介します。
1 身体的な衰え
筋肉量の低下
特に、お腹や背中などの体幹筋肉、ふくらはぎなど足の筋肉量の減少が顕著です。
筋肉量が減ることで歩きづらくなったり、転倒の危険性が高まります。
免疫力の低下
免疫力が低下し、血糖値の管理が難しくなるというような問題も出てくるでしょう。
口腔機能の低下
オーラルフレイルといって口腔機能の低下も起こります。
食べ物が噛みづらくなったり、食べこぼしなどが増えたりすることが増え、悪化すると嚥下障害や摂食障害に進行します。
2 心理・精神的な衰え
認知機能の低下
・記憶障害
・失語
・失行
・失認
・遂行機能障害
などが起こる状態です。
いわゆる物忘れや、物の名前がなかなか出てこない、計画立てて物事を進められないといったようなことから始まり、進行すれば認知症と診断されます。
心理的な衰え
症状として、うつ病を発症する場合もあるので注意が必要です。
初期段階は「ボーッとする」「落ち着きがなくなる」などの変化が見られる場合が多く、認知症とも勘違いされやすい傾向にあります。
3 社会性の低下
人との交流、つながりの減少
健康的に生きる意欲にもつながるため、高齢者の社会性を維持することはとても重要と考えられます。
また今であれば新型コロナウィルスによって、以前よりも人と会う機会が減っている現状があり、深刻化しています。定年退職や配偶者との死別で一人で過ごす時間が増える高齢者は多くいるでしょう。
人との会話や交流、社会とのつながりがなくなってしまう事によってもフレイルは進行していき、心身が健康であっても安心とはいえないので注意が必要です。社会性の衰えというのは、人や社会とのつながりが減っていくことです。
フレイルが起こる原因は「老化」と「疾病」
例えば飲酒や喫煙、孤立など多くの問題が関係しているといえるでしょう。なお2大要因は「老化」と「疾病」ですが、老化や病気を引き起こす原因は人によって様々です。
高血圧、糖尿病、脳卒中や慢性腎臓病などの治療がうまくいかずにフレイルになると考えられます。疾病には色々ありますが、生活習慣病などが代表的です。老化が筋力や口腔機能、認知機能の低下をもたらします。
サルコペニア・廃用症候群との違い
ここでフレイルとよく似たものとして挙げられる「サルコペニア」と「廃用症候群」についても触れておきたいと思います。
サルコペニア
加齢や病気によって筋肉量が減少し、身体機能が低下していく状態です。
サルコペニアを発症することで転倒や骨折のリスクが高くなり、認知症やうつ病が進行する場合もあります。
サルコペニアもフレイルも機能低下という部分は共通していますが、サルコペニアの場合は筋肉量の減少による身体機能の低下のみを指しています。
それに対してフレイルは、身体機能の低下以外にも認知機能、活動の低下といった幅広い要素を含んでいます。
フレイルの中核症状の一つとしてサルコペニアが含まれると考えられるでしょう。
廃用症候群
廃用症候群とは、生活不活発病ともいわれています。
病気やケガなどによって動けない状態が続くことで、身体機能が大幅に低下してしまう状態です。
精神状態にも影響し、うつ病などを引き起こすこともあります。
廃用症候群はフレイルを引き起こす危険因子の一つといえるでしょう。
「健康長寿の3本柱」
「フレイル」を予防するために、私たちができることは何があるのでしょうか?
「健康長寿のための3本柱」について紹介します。
1 栄養
バランスの良い食事を3食
フレイル予防にはしっかり食べて栄養をとることが欠かせません。
バランスのよい食事を3食しっかりとりましょう。
特に、炭水化物、タンパク質、ビタミン・ミネラルを意識して摂取すること。タンパク質は筋肉を作る重要な栄養素です。
さらにエネルギーとなる炭水化物、身体の潤滑油となるビタミン・ミネラルも必須です。
体重が減っていないかをこまめにチェックするようにしましょう。
口腔内の健康も大切!!
また栄養をしっかり取るために口の健康を保つことも大切です。
加齢に伴い、だんだんと噛む力が弱くなったり、舌が力強く動かなくなったりと、オーラルフレイル(口腔機能の低下)も進行します。
何もせずに放置すると、食べこぼす、むせる、噛めないような状況になり、食事が困難になっていきます。
舌回し運動やパタカラ体操など、口腔機能運動を取り入れオーラルフレイルを予防しましょう。
2 運動
散歩や運動などの有酸素運動
※筋肉量の増加で血行促進!!
ウォーキングや体操などの有酸素運動を取り入れましょう。しっかりと体を動かし、歩くことで筋肉を鍛えます。庭の手入れや家事などでこまめに動くこともよいでしょう。
足腰を鍛えることで血流もよくなります。血行促進は認知機能の低下予防にも効果的です。歩幅を広げて早足で歩くことがポイントです。
しかし運動がよいからといって、いきなり走ったり激しい筋トレをするとケガの危険がありますので注意しましょう。
まずは近所の散歩から始めて、慣れてきたら徐々に運動量を増やしていくことがおすすめです。
3 社会参加
人や社会とのつながりを持っておく
※会えない場合は電話や手紙などで!!
社会参加は特に心の健康につながります。
身体の健康に気を配っていても社会参加がなくフレイルが進行してしまうことはよくあります。
地域の行事やボランティア活動に参加したり、子どもや孫に会う機会を増やすなど積極的に人との交流を増やしていくことです。
これは、家族や周りの人たちが気にかけることでも改善できます。
今は気軽に外出できないような日々ですが、会えない場合にも手紙や電話などで連絡をとりましょう。
また自治体の介護予防の取り組みなどに参加するのもおすすめです。
いずれにせよ、人とのつながりを維持することがとても大切です。
さいごに
元気に長生きするために
主に「フレイル」予防は、75歳以上の後期高齢者を対象にして呼びかけています。後期高齢者ならまだまだ先の話だし関係ないと思われるかもしれませんが、今から生活の見直しや、社会的なコミュニティーを作っておくことが大切です。
「健康長寿の3本柱」にあるように、食事 運動 社会参加において、生活習慣や人とのつながりやコミュニティーをいきなり変えることは難しいです。
そして、年をとればとるほど変化をしたり、新しいことを始めることに億劫になります。
元気に長生きするためには、今のうちから見直しておくことをお勧めします。
自分の健康は自分で守る!!!
あなたが1日でも長く健康な日々を過ごせますように・・・❤️
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